身延山でインバウンド向け仏教入門体験モニターツアーを催行

紅葉に染まりつつある身延山を舞台に、11月14日から二泊三日の行程で、インバウンド向けの仏教入門体験モニターツアーが催行されました。これは、観光庁の「地域観光新発見事業」に、当会も参画するみのぶ農泊地域連携協議会が提案して採択されたプロジェクトの一環で、当日はアメリカのローカルニュースメディアや、インドの旅行会社の他、身延山でインバウンド誘客に注力する宿坊覚林房で働く欧米各国のワーキングホリデーの若者がゲストとして参加し、当会の通訳案内士がガイドを務めました。

比叡山、高野山と並び日本仏教三大霊山のひとつとされる身延山は、文化志向の高いインバウンドに大きなポテンシャルを有しており、当会では地域の宿坊や伝統工芸などの事業者さんたちとともに、観光庁の補助事業等を活用して、インバウンド誘客に向けた様々な取り組みを進めてきました。仏教こそが身延山のコンテンツの中核であることは間違いないのですが、これまでの私たちのツーリズムの立場からの取り組みとしては、様々な宗教的背景をお持ちのお客様に配慮して、仏教そのものをツーリズムのコンテンツとして取り上げることを無意識に避けて、仏教に関わりの深い工芸や芸能や食などの周辺領域のコンテンツにフォーカスして、体験プログラム化に注力してきました。ところが、お客様からは、もっと仏教そのものに触れて理解したいとの声や、周辺分野のコンテンツばかりが体験プログラムとしてラインナップされていて「商業的な感じがする」との声が、多く寄せられるようになりました。

そこで今回思い切って、観光庁の補助事業を舞台に、これまで無意識に避けてきた「仏教」そのものにどっぷり浸かって貰う、仏教三昧の三日間のツアープログラム「身延山三日坊主」を企画し、インバウンド向けにモニターツアーを催行することに致しました。伝統的な巡礼装束である行衣、笠、杖に身を固め、伝統的な登拝道を登って身延山頂の奥之院にお参りして修法(祈祷)を受けたり、早朝五時から本山で行われる朝のお勤めに参加したり、身延山の聖域である日蓮聖人の御廟所に提灯を持って夜参りしたり、写経や、日蓮宗独特のお題目をひたすら唱え続ける瞑想行である唱題行に、言語の壁を超えてチャレンジしたり、日本人の食前食後の合掌しての挨拶の淵源でもある、食への感謝の祈り「食法(じきほう)」の英訳版を唱和したり、精進料理に込められた意味と工夫を料理人から直に解説して貰いながら味わったり、文字通り「仏教漬け」の三日間を過ごして貰いました。参加者からは、日本文化の基層に触れ一層理解を深めることができた、自分自身と向き合う時間を持てた、自分自身の人生を見つめる新たな視点を得ることができた、などのポジティブなフィードバックを頂きました。

身延山には、宗教を超えて、人のこころにダイレクトに訴えかける力があることを、今回のモニターツアーを通じて実感しました。消費の場としてのツーリズムではなく、何かを得る場としてのツーリズムを、ここ身延山を舞台に形にすべく、引き続き「精進」して参りたいと思います。