観光庁ガストロノミーツーリズム推進事業への取組み

当会では、昨年夏から今年冬にかけて、観光庁「地域一体型ガストロノミーツーリズムの推進事業」に参画し、地域の食を巡る新しいツーリズムの創出に取り組んできました。

山梨県西部の巨摩地域は、縄文時代の人口密集地として知られ、「星降る中部高地の縄文世界」として日本遺産に登録されており、豊かな食の恵みがあったことを窺わせます。その地に自生する植物の実を頂き、その種を播いて育てる栽培を固定種栽培と言いますが、そうして育てられた作物は、その地の恵みをいかんなく体現した作物と言え、そうした作物を食することは、その地の恵みをまるごと頂く行為でもあります。

現代の農業経済の中では、高生産性・高収益性を目的に交配して創り出された種子(その多くは実っても種子を宿さない)を種苗メーカーから購入して栽培する農業が圧倒的多数を占めていますが、ここ巨摩地域には固定種作物が数多く残されており、山梨県で知られている固定種作物13種類のうち実に10種類が巨摩地域で生産されているとのデータもあります。その最大の成功例が身延町の「あけぼの大豆」で、農林水産省のGI(地理的表示制度)にも登録され、地域のブランディングにも大いに貢献しています。

今回のプロジェクトでは、こうした巨摩地域に残る固定種を巡り、地域の食の背景にある自然、歴史、文化を含めて、まるごと「地の恵み」として楽しむ、新しいガストロノミーツアープログラムを、地域の農家さんや、料理人さん、飲食店さんと一緒に作ってきました。取り上げた地域作物(固定種でないものも含む)や食材は、身延町のあけぼの大豆、早川町の茂倉瓜、日本蜜蜂の蜂蜜、市川三郷町の大塚にんじん、北杜市の浅尾大根、真菰など多岐にわたります。北巨摩から南巨摩までを巡る、2泊3日のモニターツアーを4回催行し、毎回インバウンドのお客様や、在日外国公館の方や、海外からのインフルエンサーなどに参加して頂いて、農家さんと一緒に収獲し、地元の料理人さんに開発して頂いた新しい料理を地元の皆さんと共に頂き、それらの食を生み出してくれた地域の魅力を訪ね歩きました。

そうした活動の中で、世界的な和太鼓演奏集団、鼓童出身の若き和太鼓演奏家の神谷俊一郎さんのグループとのご縁が生まれました。神谷さんのグループでは、「アーチスト・イン・レジデンス」の活動に精力的に取り組んでいます。これは、芸術家が、地域コミュニティの中に入り、その地から生まれ出るものを芸術作品にする創作活動を行い、未完成の芸術作品を地域コミュニティの皆さんに見て貰うことで完成を目指し、その芸術創作活動を地域コミュニティの活動として根付かせる、というもので、ヨーロッパでは広く浸透している芸術活動です。この活動を、私たちの巨摩地域での食と農の取組みとコラボレーションしましょう、と申し出てくださいました。

12月と1月に、身延山の宿坊覚林房の本堂を舞台に、土と労働と実りをテーマに、法華経の熱心な信者でもあった宮沢賢治の詩集「春と修羅」からインスピレーションを得て、和太鼓を中心とした和楽器と、神楽の舞い、纏いの舞い、役者の語りから成る、壮大なパフォーマンスを創作し、演じて下さいました。その時の様子が、プロモーションムービーとして出来上がりましたので、ご紹介させて頂きます。

[full ver.] Artist in Residence Performance with 覚林坊 Kakurinbo – YouTube

今年も、更に一歩踏み込んだガストロノミーツーリズム創出の取組みを進めて行く予定です。どうかご期待ください。